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バイバイ、ブラクバード/伊坂幸太郎
評価:
伊坂 幸太郎
双葉社
¥ 1,470
(2010-06-30)
コメント:どんな条件でも「ちょっと幸せになれるエンターテイメント」に仕立てる手腕はさすがです。

太宰治の絶筆小説「グッド・バイ」から着想して作ったまったく新しい物語。

条件付で執筆することは作家の力量を問われることでもありますが、さすが伊坂さん。
太宰治には申し訳ないけれど、伊坂さんの物語の方が卓越しています。それでも当時の人が読み比べたら太宰の方に軍配が上がるのでしょうか。(「『バイバイ、ブラックバード』をより楽しむために」に「グッド・バイ」の全文が掲載されています。)

2週間後に「あのバス」に乗せられ恐ろしいところへ連れて行かれる運命が決まっている主人公が、監視役の繭美と共に、5股をかけていたその5人の女性に別れを告げに行く話。
5話までが相手の女性一人ずつとの話で、6話目は今回単行本にする際に新しく書き下ろされた続き話。

相変わらずテンポのよいウイットに富んだ語り口&会話です。今回登場の繭美はその性格上会話がかなり男勝りで且つ軽く、「〜じゃねえか」「〜だろうが」といった調子なので、余計文章の流れに弾みがつきます。そこが狙いかもしれませんが、ちょっと気になるところでもあります。
キーパーソン繭美の圧倒的な存在感。描写もともすれば主人公より多く、「影の主人公」の感じです。
それに比べてこんなにもイメージの沸かない主人公は初めてです。人物像がはっきり浮かびませんでした。

読み進めるうちに繭美へのイメージが少しずつ変化し、そして最終章へとつながってゆくところがさすが伊坂さん、うまいです。
既出の五話を収束し、共感を持たせて予想外のうならされるラストへと展開してゆく、一番コアとなるこの最終章。「これがなきゃ全然面白くねえだろうが。」と繭美が言いそうです。

「あのバス」に乗せられるということは死をイメージさせていますが、詳細は最後まではっきりしません。何を詳しく表し、何を読者の想像にゆだねるか、ここら辺の作者の取捨選択は読後感を左右する1つのポイントとなります。(「『バイバイ、ブラックバード』をより〜」でもご本人がちょっと触れています)
私は「あのバス」もその行き先もはっきり説明しない事に違和感はありません。これらは小説全体を納得させる理由付けのために作られたものと理解します。
「グッド・バイ」に習って女性達に別れ話をしに行かなければならない → 避けられない死が迫っているという設定をしなければならない
ということですね。ただ、読者に「理由付けのために考えられたモノ」と簡単に見抜かれるような書き方をするところはちょっと詰めが甘いかなとも思われます。そういう考えに至らしめないほど違和感なくリアリティを持った表現を探ってほしかったです。これは「あのバス」とその行き先を詳細に書き込むこととは別物です。
これと同じことが母親に関する挿話にも言えました。主人公の性格を形成する理由付けのために考えられた話ということがあからさまでした。
むずかしいところですが、伊坂さんの作品が好きなのでおのずとハードルが上がります。
頑張ってください

楽しくさらっと読めました。重苦しい「死」が背後にあるにもかかわらず、伊坂さんらしいアップテンポのエンターテイメントに仕上がり、楽しく考えさせていただきました。
伊坂さんに関して私以上にハードルの高い娘の感想は、「がんばって読んだ」(=おもしろくなかった)でした

次回は長編を期待します。


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コメント
あまり爽やかでない題材ですが、何故かサラリと楽しめるのはさすがという感じです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
| 藍色 | 2011/06/17 6:50 PM |
藍色さんこんにちは。
あまり爽やかでない題材・サラリと楽しめる仕上がり・ノスタルジックな装丁。本当に「さすが」伊坂さんですね。

震災に遭われて大変かと思います。ファンとしては早く立ち直っていただき新生次回作を期待してしまいますが、今はただお見舞いとエールを申し上げるのみです。
| じゅーーす | 2011/06/19 8:36 AM |
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